大切な家族との突然の別れ。車の中で燃えて消えた父を見て、過去のつらい経験が今の自分の強さになる
「みき、大変!お父さんが、お父さんが・・・。」
私が19歳の初夏の時です。
時刻は夜中の2時でした。
突然母が慌てて私の部屋に入ってきました。
明日は楽しいサークルの旅行だと言うのに、こんな夜中に何を騒がしくしているのだろうと。
夢の中で何度も電話の音が響いていました。
眠い目をこすりながら起きました。
立っていた母の顔には、まったく血の気がありませんでした。
「今から警察に行かなければ。」
そう、大量の電話は地元警察からの電話でした。
警察署に行くために急いでタクシーへ
「みきは後からでいいから。」
母は急いでパジャマから着替えて先にタクシーで警察へ。
私は、何がなんだかわかりませんでした。とにかく大変な状況であることは、だいたい理解出来ました。
私の父が亡くなった?
ドラマの世界の中にいるようでした。
とりあえずタクシーを呼びました。
後から来たタクシーに1人で乗り込んだ私ですが、夜中にタクシーに乗るなんて初めてです。
「警察署までお願いします。」
19歳の若い娘が1人でタクシーだなんて・・。警察に向かうなんて、バクバクと心拍数が上がって苦しくなりました。
それでも蒸し暑い夜にタクシーの後部座席に乗車し、わけがわからないまま急いで向かうことにしました。
タクシーの中で見た衝撃の映像
「どうしたんだろうねぇ。すごい警察の数だ。」
タクシーに乗っている途中、パトカーが何台も通り過ぎました。
パトカーの大群が止まっている所を通り過ぎました。
橋に激突した車が暗闇の中で、真っ赤な炎をあげて燃えていました。
「しかし、すごいねぇ。何が起きたんだろうねぇ?」
タクシーのおじさんにそう言われて、ハッとしました。
きっと、あの車、父の車なんだ。父が燃えているんだ、あの中で・・。
父が自ら自分を燃やすことを選ぶなんて。
ガソリンを自ら浴びて自分を燃やすなんて。
あの熱い鉄の塊の中で家族が燃えていることが、19歳の私にはまったく理解出来ませんでした。
おまわりさんに道路をピーピーと誘導されながら、心臓への血がぴたりと止まった気がしました。
これはきっと夢なんだ。
ものすごい悪夢なんだ。
母から起こされた時から、これは夢なんだ。
そう願っていましたが、夢から覚めませんでした。
20分後に地元の警察署に着くことになりました。
事情聴取が夜明けまで行われました
ドラマの中でしか見たことがない部屋。
せまくて薄汚くて、犯罪者のポスターだけが貼ってある部屋。
机とパイプの椅子が2つあるだけです。
その中で私と刑事さんと2人きりです。
母は別の部屋で、警察の方に事情を聞かれているみたいでした。
「お父さんと最後に会ったのはいつですか?」
40代後半と思われる刑事さんに色んなことを聞かれながら、ペラペラの薄い白い紙に鉛筆で日付と時刻を書いています。
私から聞いたことを太い字で丁寧に書きあげていました。
シーンとしたせまい室内の中で、感情はどこに行ってしまったのでしょうか?
もうろうとして、何を話したかほとんど覚えていません。
それでもその尋問部屋を出たのは夜が明けた5時過ぎでした。
海外にいる兄に初めて電話をかけました
再度タクシーを呼び、自宅に帰りました。
行きに見たあの燃え盛る現場は、まだたくさんの警察の方がいらっしゃいました。
灰色の灰と真っ黒焦げに燃えたあとの車。
黄色と黒色のテープが引かれていました。
脳みその中で何が起きているのかまったく理解が出来ていませんでした。それでもなぜか、ある1つのことだけが頭の中をよぎりました。
「そうだ、海外にいる兄に連絡しなくては。」
自分勝手に暮らしている兄を、実はずっと恨んでいました。
でも世界中で唯一血がつながっているのが兄でした。タンスの中をひっくり返して、兄の電話番号を見つけ出しました。
恐る恐るオーストラリアへ国際電話です。
兄のホームステイをしている家にかけました。
「Hello! my brother please!」
片言の英語で必死に伝えました。何とか理解出来たのか、兄が出てきました。
父が亡くなった事実を知った兄。
自由気ままに生きていた兄が、不自由になった日でした。
兄が葬儀のために、帰国することを確認しました。
電話を置いて見た窓に広がる日の出。
あの日から兄との関係が改善していきました。
後日、父のことが新聞に載りました。近所の方に偏見の目を向けられて生きてきました。
犯罪者のような目線を受けて、ずっと生きてきました。
「私は悪いことをしていない。世間の目に負けてはいけない。」
この事が私をさらに強くしていきました。
家族がバラバラになってから、家族の決断をより強くした日でした。
過去のつらい経験があったからこそ今の強い自分がいる
あの父を突然失ったつらさと悲しさ。
大切な家族を置いていった父への恨み。
実はいまだに消えてはいませんが、消えていないからこそ生きていると感じます。
あの時のつらい出来事が起きている時、
「2度とあんなことは起きてほしくない。」
起きてしばらくはずっとそう思っていました。
しかし、あのつらい経験があったからこそ今の自分がいます。
あのつらい経験が、今の自分の強さのもとになっています。
父が自ら命を経ったことは、むちゃくちゃ許せないことです。今でも私の目の前に出てきてら、何をしてしまうだろうか?
私はきっと犯罪者になってしまうことでしょう。
でも今1つ言えることがあります。
あのつらい経験がなかったら、私は弱虫の人間になっていたはずです。あのつらい経験が、今の私の生きる原動力になっています。
お金のつらさに耐え切れなくて父が死んでいったなら、
現世に生きる私がお金のつらさを幸せに変えて見せるさ!
つらさが人の原動力になります。
この強いパワーは、あの時の涙の量のおかげです。
つらい経験が黒色だったら、私が白色に変えてみせる!
人生はオセロと同じだからこそ生きられます。
父の死んだ魂の分だけ、自分の魂に変えてたくましく生きていきたい。
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