空き家予備軍の実家、誰も住まないお荷物物件になる前に考えたい税金や維持費のこと

私の実家は、東京都の郊外の住宅地にあります。
1970年代後半の高度成長期時代に、大手不動産会社が土地を分譲。今は亡き父が、食品の配達営業先にアクセスしやすいということで、即買いしたようです。
父が60歳で亡くなり、高齢の母が一人暮らししている現在、脳裏をよぎるのは実家の「空き家問題」です。
7軒に1軒は人が住んでいないという世の中の現実を目の当たりにし、他人事では済まされない状況になってきました。
久しぶりに実家の夏祭りに行ったときのこと。子どもの頃にとてもお世話になったご近所の方に、とんでもない話を聞いてしまったのです。
実家の周りは超高齢化でほとんど人が住んでなかった
夏祭りが始まる前に、古い一戸建てが密集する実家周辺を歩いてみたのです。
「ここは同級生のうちだったな」とか「ここは習字の先生のうちだった」とか、懐かしい記憶が蘇ってきました。
しかし、周り一帯はひっそりとしており、ほとんど人が歩いていません。夏祭りがあるというのに、この異様な静けさはなんだろう?
子どものころは夏祭り前の日中に「こども神輿」を大勢で担いで街中を練り歩き、キンキンに冷えたアイスキャンディを途中の休憩所でもらいながら汗だくで練り歩いたものです。
しかし、2年前からこども神輿は中止に。盆踊りも自治会のおじいちゃんとおばあちゃんばかりで、子どもの数は次第にまばらになっていきました。
2軒となりに住む同級生のおばちゃんに、「ご近所、なにかあったの?」と聞いてみたところ、
「隣もその隣も、ほとんど住んでないねぇ。みんな出ていっちゃったし、誰も住んでない家ばかりでさみしい街になったよ。」
家を購入した先代たちはすでに80歳以上の方たちが多く、子どもたちが出ていった後は一人暮らしに。その後は亡くなる方が増え続け、空き家が点在するようになっているとのことでした。
「売り家」と看板がついている家もあれば、ボロボロに朽ち果てている家もあり、管理すらされていない家も..。
あんなに活気があった街の面影はどこにもなく、超高齢化により廃墟の街と化していたのです。
実家のスペックは築40年以上。しかも売れるような物件ではない
実家近くの商店街は、30年前に多くの人で栄えていたものの、現在はシャッター街に変貌。実家は廃墟の街の中心地にあります。
超高齢化のため活気があるお店もなく、1時間に2〜3本しか電車が走っていません。
環境面を見ただけでも到底住みたいとは言いがたい街。しかも、実家は私が生まれたときと同時期に購入したため、築40年以上が経過しています。
しかも、道が公道に面していないのです。
都市計画区域内で建物を建てる場合、原則として建築基準法で定められた幅員(幅)4m以上の道路に2m以上接した土地に建てなければなりません。
築年数40年超えで、しかも立て替えができないという再建築不可の物件ですから、家の価値なんてほぼゼロ!
むしろ、年々売値は下がって行き、売りたくても売れないという「負の遺産」になりかねないのです。
実家を売却したいのに売ることができない!旗竿地を買うと建て替えができずに30年後に後悔することに
母が住まなくなっても税金だけがかかる現状
もし母が施設に入ったり、亡くなった場合に実家が空き家になった場合、税金面はどうなるのでしょうか?
まず、家にかかる税金といえば「固定資産税」。土地や家屋といった固定資産を持っている人にかかる税金で、毎年1月1日時点に所有者として固定資産課税台帳に登録されている人が納めます。
この固定資産税は、住んでいない、使っていない家であっても、容赦なくかかってきます。
固定資産税と都市計画税は、以下の計算式で求めることができます。
- 固定資産税=固定資産税評価額(土地・建物)×税率1.4%(標準税率)
- 都市計画税=固定資産税評価額(土地・建物)×税率0.3%(制限税率)
家が建っていると、土地にかかる税金が優遇されます。
200平米以下の場合、
- 固定資産税:×1/6
- 都市計画税:×1/3
例えば、家屋の評価額が500万円、200平米以下の土地の評価額が1,800万円とすると、
- 固定資産税:家屋の評価額500万円×1.4%+土地の評価額1,800万円×1/6×1.4% = 11万2,000円
- 都市計画税:家屋の評価額500万円×0.3%+土地の評価額1,800万円×1/3×0.3% = 3万3,000円
実家を相続した場合、実際に住んでいなくても、毎年14万5,000円の税金がかかるのです。
そのほかにも都市計画税もかかりますし、実家を引き継ぐとなると贈与税、相続税、不動産取得税、名義を変えるときは登録免許税など、あらゆる税金がかかることに。
空き家は資産のひとつ。
住む住まない関係なく、持っているだけでお金がかかってくるのです。
水道光熱費など維持費だけでいくらかかるのか?
家に人がいなくても、家は生きています。
住んでいないと劣化がどんどん進むため、湿気でカビが生えないように、定期的に窓を開けて換気する必要があります。
「空き家対策特別措置法」が制定され、倒壊寸前まで放置しておくと、きちんと管理するよう国から助言・指導・勧告がくるように。特定空き家に指定された場合は、所有者にペナルティが課せられてしまいまいます。
空き家対策特別措置法とは何?空き家の現状は他人ごとではない。ボロボロの実家を今後どうしていくべきか
水道を止めると水道管がさびて破損しやすくなったり、悪臭の原因にも。定期的に水を通す必要があります。おそらく2ヶ月に1回約4,000〜5,000円はかかる計算です。
掃除のために電気も通しておく必要も。アンペア数を下げてブレーカーは常に落としておくにしても、月に約1,000円は必要です。
実家までの交通費と合わせても、月に1万円程度はメンテンナス代として見積もっておく必要があります。
と言っても、そんなにちょくちょく見に行けませんからね..。
空き家の見守り代行サービスを利用しても、月1万円〜1万5,000円ですので、利用することも検討しなければなりません。
更地にしたいけれど税金が跳ね上がってしまう!
思い出もいっぱい詰まっている家。でも、持っているだけでお金がかかる家..。
「維持費がもったいないから、更地にしてしまえばいい!」という発想もあります。
しかし、壊してしまえばすべてが解決するわけではありません。
家を壊すために解体費用がかかります。一般的な木造家屋の場合、おそらく100万円〜200万円はかかることでしょう。
たくさん眠っている家財やゴミたちをどうしたらいいかも問題になってきます。分別するにもトラックが必要ですし、廃材処分にもお金がかかります。ご近所の騒音対策なども、手間と費用がかかります。
もっと問題なのが固定資産税です。「家が建っているとき」は、土地にかかる税金が特例によって軽減されます。
しかし、家を解体してしまうと、この特例からはずれてしまい、通常の税金がかかってしまうのです。
例えばですが、先ほど計算した200平米以下の土地の場合、解体してしまうと軽減処置がなくなるため、約25万円(1/6の税金優遇がなくなる)と、解体前の約2.3倍に跳ね上がってしまうのです。
わざわざ高い費用を払って壊したのに、税金が上がる。
相続したくても高いお金がかかる「お荷物物件」を抱えるぐらいなら、わざわざ相続なんて誰もしたくなくなるわけです。
古い家を空き家のまま放置したくなる気持ちも、とてもよくわかる気がします。
空き家予備軍の今、生きているうちに検討していこう
築40年以上も経過しており、再建築不可で売り値も期待できない実家。そうは言っても、生まれたときから思い出がいっぱい詰まった家であり、簡単に見過ごすことはできません。
相続するにもお金がかかり、維持するにもお金がかかる。
壊したらもっとお金がかかる。
この現実をどう改善していったらいいのか?
私ひとりの問題ではなく、もちろん、現在住んでいる母が決めることであり、空き家予備軍の今、兄弟や親戚ともきちんと話しておく必要があります。
親がまだ元気だから大丈夫かな?って思いたくなってしまいますが、親が元気なうちに話しにくいこともきちんと向き合って話し合い、少しずつ整理していったほうがいいですね。
生きているうちに、死後のことを考える。
あまり考えたくないことですが、いつか死を迎える人間。生きていく人にバトンをつないでいくためにも、とても大切なことなのかもしれません。
実家の今後について甘く見ていた自分が、なんだか情けなくなってきてしまいました..。
今後、建物ごと売却がいいのか、更地にしたほうがいいのか、実家の今後の活用方法についてよく検討していきたいと思います。
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